かつて見たアンケート調査で、受験生が最も苦手と答えていたのが仮定法でした。皆さんはどうですか?実は、仮定法はきちんと文法事項を押さえていれば、とても簡単ですよ。
さて、今回はその仮定法を使った珠玉の名文を紹介しますね。仮定法のとっつきにくさが少しでも解消できればと思います。
その名文とは、これです。
If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive.
If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.
これは、レイモンド・チャンドラーというアメリカのハードボイルド作家が、その著書「プレイバック」の中で、主人公の探偵、フィリップ・マーロウに言わせたセリフです。
この英文を、翻訳家の清水俊二氏は、こう訳しています。
「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない。」
この名セリフがいつのまにか「男は強くなければ生きていられない。優しくなければ生きている資格がない。」というふうに、まるで男の生き方を説くがごとく使われるようになっていますね。
実際の小説の中では、女性に「あなたのようなしっかりした男が、どうしてそんなに優しくなれるの?」と聞かれて、答えたセリフです。ですから、上から目線で押しつけがましく言っているというより、どちらかと言うと妥協する自分への照れ隠しのように感じます。
さて、仮定法の話にもどります。仮定法には、2種類あります。仮定法過去と仮定法過去完了です。この英文は仮定法過去で書かれています。2つの違いは、その状況が現在なのか過去なのか、ということですが、このセリフはもちろん今の自分のことを話しているので、仮定法過去を使っているわけです。
仮定法過去は、「過去形」を使って「現在」の事実と異なる仮定をする、ということからその名前がついています。事実ではないので現在形は使えません。だから、代わりに一つ時制をずらして過去形を使うわけです。
If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive.
If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.
どうでしょうか?何とも言えない味わいのある英文ではないでしょうか?ぜひ覚えて、仮定法過去の理解に役立ててみてください!