難解な英文は、なぜ難解なのか?
その理由を知って対策をする方が効率的ですよ。今回は、その解説です。
主な理由は3つです。
まず、何といっても語彙です。あまり見かけない専門用語だったり、哲学的な単語だったり、未知の熟語が使われていることです。この対策については、「マイ単語帳」をつくることが必須です。これについては、以前に解説していますが、さらに別回で解説しますね。お楽しみに!
2番目の理由は、構文が複雑であることです。
主語がどれかわからない、動詞がどれだかわからない、文が長くて、どこがどう繋がっているのかが見えない、等の文構造上の問題です。この対策は、多くの難解な英文読解の演習を行うことです。この演習によって、文構造を見抜く力が備わってきます。
最後の理由が「省略」です。
今回は、この「省略」の難しさをどう克服するか、について解説します。
日本語でもそうですが、洗練された文を書きたければ、効果的に「省略」しなければなりません。自分の考えを全て文字にしたら、小さい子供が書いたような文になってしまうからです。
高度な英文ほど「省略」が顕著に現れます。そして、「省略」が見抜けないと筆者の意図が読み取れないのです。
では、どうしたらいいのか。
それは前後をよく見比べて、同じパターンの繰り返しがないか、をみることです。
同じ表現を繰り返すとき、2回目(あるいは3回目も)には同じ部分を省略する、これが「省略」の原則です。1回目に書いたので、2回目は省略してもわかる、というわけです。(とは言っても、多くの受験生が見抜けていません!)
実際の英文を見てみましょう。かなり難しいですが、どこに「省略」があるか見抜いてください。
The vices of others we keep before our eyes, our own behind our back; it happens therefore that a man does not pardon another’s faults who has more of his own.
いかがでしょうか。わかりましたか?
この文の意味は、こうです。
「私達は他人の欠点には目を光らせるが、自分自身の欠点は見ないようにする。ゆえに、自分の方が欠点が多い人が他人の欠点を許さないということが起きるのだ」
ではどうしてこういう意味になるのか。
「省略」されている語を補ってみますね。
The vices of others we keep before our eyes, ( the vices of ) our own ( we keep ) behind our back; it happens therefore that a man does not pardon another’s faults who has more ( faults ) of his own.
省略された語が見抜けていましたか?
同じパターンの繰り返しについて、解説しましょう。
コンマの前後の文をよく見比べてください。
後半の文頭の our own は「名詞 of one’ own」で「自分自身の~」という表現です。
例:He has no car of his own. 「彼は自分自身の車を持っていない」
前半の冒頭 The vices of others と同じパターンの the vices of our own が繰り返されるために、重なる部分である the vices of を省略したわけです。
また前半の文では、keep ~ before one’s eyes 「~に目を光らせる」という熟語が使われています。その逆の意味を持つ熟語が、keep ~ behind one’s back 「~を見ないようにする」です。
これも同じパターンの繰り返しです。前半で we keep before our eyes と書いたので、後半の文では同じパターンの繰り返しである we keep を省略したのです。
また、セミコロン(;)の後の文でも、「名詞 of one’s own 」によって省略が効果的に使われています。つまり、another’s faults 「他人の欠点」に対して、同じパターンの繰り返しである「自分自身の欠点」faults of his own の faults が省略されたのです。
いかがだったでしょうか?
「省略」は難解な文ではほぼ必ず行われています。だから「省略」を見抜ける力が英文読解には必須なのです。
ぜひ参考にしてください!